August 03, 2006

英語学習にも成功理論が当てはまる!Part 1 社会人の方々への応用

先日、新宿紀伊國屋ホールでカリスマ体育教師の原田隆史先生の講演を拝聴してきました。

先生をご存じない方へ

原田 隆史先生略歴 (BOOK著者紹介情報」より引用)
原田総合教育研究所所長。東京・京都・大阪教師塾塾頭。天理大学非常勤講師。1960年、大阪生まれ。奈良教育大学卒業後、2003年春まで、20年間、体育教師として大阪市内の公立中学校に勤務。陸上競技部の指導と生活指導に手腕を発揮し、松虫中学校では、7年間で13回の日本一を輩出。現在は、大学で未来を担う教師の育成に当たるかたわら、現役教員のための私塾「教師塾」を主宰。学校教育にとどまらず家庭や企業教育など人材育成の分野で幅広く活躍する。

先生の講演を聴いていて、「英語学習にも原田流成功理論が当てはまる!」と強く感じました。

以下、私なりに原田流成功理論を英語学習に適用してみます。

多くの英語教材や英会話スクールへそれこそ数百万円投資しても英語学習者の20人中19人は英語をモノに出来ていないと思われます。何故でしょうか?

1.明確な英語学習の目標設定とその期限を設けていない。

自分は英語を学習して何を達成したいのか?

どこまで英語が上手くなりたいのか?

上手くなった英語を使って何がしたいのか?

など、具体的な目標設定が必要です。一人で海外旅行に行ける英語力、仕事で海外赴任できる英語力など具体的であればあるほど良いでしょう。

現状の英語力を分析して、3段階の目標を設定します。:絶対できる目標・中間目標・最高の目標。

35歳男性 大手商社勤務 例)

現状の英語力:英検2級、TOEIC530

最高の目標:仕事で海外赴任してグローバルに英語を使って活躍する 5年以内に達成

中間の目標:仕事で海外赴任できる英語力を身につける(TOEIC860点以上、英検1級合格)3年以内に達成

絶対できる目標:仕事で海外出張できる英語力を身につける(TOEIC600点)6ヶ月以内に達成

各目標を更に細分化して、現状の英語力から階段を一歩一歩登って目標を達成していきます。

☆現状の英語力:英検2級・TOEIC530

一段目:6ヶ月以内にTOEIC600点取得

二段目:更に1年以内にTOEIC730点取得、英検準1級合格(今から1年半以内)

三段目:更に1年半以内にTOEIC860点取得、英検1級合格(今から3年以内)

☆3年後に中間の目標を達成

2.具体的な目標達成の為の具体的な方法を考えていない。

原田先生によると成功者は目標達成の為に少なくとも64個の具体的な方法を実践しているそうです。自分の英語力の分析から自分にあった教材の選定・学習方法・学習時間の確保、その他諸々英語をモノにするための具体的な方法が64個必要だということです。

上記一段目の目標を達成する為に毎日学習しなければならない時間を逆算して、具体的な方法を考え出します。

①1日1時間は英語学習する(朝出社前15分、通勤途中に15分、帰宅後30分) ②1日5個英単語を覚える(単語カードを作成して通勤途中に目を通す) ③帰宅後30分間はTOEICの○○というテキストを使ってReading 15分、Listening 15分、集中して学習する。 ④i-PadTOEICのリスニングを録音し、通勤途中に聞く ⑤朝はNHKラジオのビジネス英語を出社前に聞く ⑥毎週1回1時間、外国人講師の英会話レッスンを自宅で受ける。

 

これでもまだ6個です。皆さんは64個の目標達成の為の具体的な方法を考え出せますか?

3.目標と方法を持っていても成功するまで継続できない。

つまり英語をモノにする前に途中で挫折してしまうのです。これで行こうと決めても3日坊主ですぐに教材や学習方法をコロコロ変えてしまう。これでは、いつまでたっても成功は覚束ないでしょう。

上記1日1時間の英語学習方法を皆さんはどう思われましたか?

出社前15分のNHKラジオのビジネス英語聴取、通勤途中の単語カード・英語リスニング、帰宅後30分のTOEICテキストによる学習、そして週1回の外国人講師による英会話レッスン。これ位なら自分にも出来そうだと思われたことでしょう。

しかし上記中間目標を達成するまで3年間で1095日、1日も休まずにこれを続ける自信はありますか?

顧客の接待で深夜までお酒を飲んで帰宅、または終電ギリギリまで残業をしてクタクタになって帰宅、それから30分間英語学習できますか?いくら深夜に帰宅しその後30分間英語を学習して、翌朝早く起きて15分間ラジオのビジネス英語を集中して聴くことができますか?満員電車に乗りながら単語カードとリスニング学習を毎日行なえますか?

こう掘り下げて考えると1日1時間の英語学習でも集中して1年365日実践、しかも3年間それを継続することは、忙しい社会人にとってはたいへんなことです。

「私生活にまで踏み込んで目標達成の為に自分の生活態度まで変えないと成功しない。」というのが原田先生の教えです。

英語学習の為に、心・技・体を整えないと自分の目標を達成する為の方法を継続できません。「たかが英語学習、されど英語学習」です。

原田語録に当てはめれば、「英語学習と思うな!人生と思え!」です。

「たかが英語学習と思うのではなく、自分の人生だと思って真剣に取り組まないと絶対に成功できない。」ということです。

英語学習の心技体を考えてみましょう。

英語を真剣に学習する心とは?

自分の決めた学習メニューを毎日必ず実行する強い心がないと、自分にピッタリ合ったどんなに素晴らしい学習方法でも継続できません。今日は仕事で疲れたからやめよう、今日は気分が乗らないからやめよう、今日はお酒を飲んで集中できないからやめよう、今日は見たいテレビがあるからやめよう...学習しない理由(言い訳)はいろいろと考えられます。

学習する部屋や机の上が散らかっていたら心が乱れて、学習する気分にもならないかも知れません。また、使うテキストやCD、辞書や単語帳、ノートや筆記用具などが整理整頓されていなければ効率が悪いし、時間の浪費に繋がります。「やる気」も失せてしまうかも知れません。「心を落ち着かせ心を綺麗に整えるには、掃除と整理整頓が不可欠だ。」これも原田先生の教えの一つです。

また、私生活が充実していないと英語学習も充実できないのです。

仕事が上手く行っていなければ、英語学習どころではないかも知れません。

夫婦関係・親子関係がギクシャクしていれば英語学習にも「やる気」が出ません。

心の悩みや心配事があっても学習に集中できません。

つまり、私生活に問題があれば、それを改善しないと心が落ち着かず、英語学習にも集中できないのです。

原田流成功理論では、「生活を改善しないと成功する確率が低くなる。」と考えます。

英語学習する技とは?

闇雲にテキストを音読しても、闇雲にCDの後につけてリピーティングしても、闇雲にCDを毎日聞きまくっても、効率は良くありません。自分にピッタリ合った教材・自分なりに工夫した学習方法が必要です。単語を毎日5個ずつ覚えるにも効率を上げるために自分なりの拘りと工夫が必要です。自分の現在の英語力を次の段階までに伸ばす効率の良い学習方法(技)に磨きをかけなければなりません。自分の英語力・性格・生活スタイルに合った学習方法をいろいろと研究して、「今の自分には、この教材を使ったこの学習方法がベストだ。」という方法を探し出さなければなりません。前述の例のようにNHKラジオ英語プログラム+市販教材によるセルフスタディ+外国人講師によるマンツーマン英会話レッスンなどいくつかの学習方法(技)を組み合わせる必要も出てくるでしょう。自分で自分の英語力を分析してベストの学習方法を決めることができないのであれば、英語学習カウンセリングというかたちで、専門家(英語学習カウンセラー)の意見を積極的に取り入れることは効果的です。

英語学習する体とは?

人間何をやるにも体力・健康が不可欠です。英語学習でも体力がないと駄目です。体力がないと学習に集中できません。健康にも留意していないといけません。風邪を引いていては効率が悪い。学習の前にお酒を飲んでは集中できません。睡眠不足でも集中できません。十分に睡眠をとり健康に留意し深酒は慎む、暴飲暴食も慎む。

イチローは翌日の試合にベストコンディションで臨むために夜22時以降は水以外口にしないそうです。ナイターの試合が終了するのは夜22時直前か場合によっては22時をまわってしまいます。自ずと試合が終わってから寝るまでに水しか口にしないことになります。試合が終わってから食事を摂ったり、冷たいビールの一杯ぐらい飲みたいと思うのは凡人ゆえでしょうか?

12時前には必ず就寝し、1日7時間の睡眠時間を確保し、暴飲暴食しないようにして、しかも成人病へ繋がるような食べ物に気をつけ、毎朝または毎晩、軽い運動をして成人病を予防、お酒やタバコもほどほどに、そうやって体調を整えて毎日の英語学習に集中できるように生活を改善していかなければなりません。

皆さんは最近、きちんとした食事をしていますか?
コンビ二弁当やファストフードに頼っている人は、慢性的にビタミンやミネラルが不足気味です。また、喫煙や飲酒、ストレスなどにより、身体のビタミン類は失われてしまいます。カルシウムやビタミンB群が不足すると、神経伝達物質が減少し、脳が正常に働かなくなるそうです。

このように英語学習の為に、心・技・体を整えるという切り口から目標達成への具体的な方法を考えてみると上記英語学習方法6個以外にも多くの方法が考えられます。

⑦英語学習する部屋と机は毎日綺麗に掃除し整理整頓に努める。

⑧夜12時前には必ず就寝し、1日7時間の睡眠時間を確保する。

⑨夫婦関係または親子関係を改善するために、月1回は外食・日帰り小旅行・皆でスポーツ・映画館での映画鑑賞など家族サービスを心がける。

⑩仕事の効率を最大限に高めて、遅くまで残業しなくても済むように工夫する。特に午前中に集中してその日の仕事の段取りを念入りに組み、効率よく仕事を片付ける努力をする。

⑪暴飲暴食や飲酒・喫煙は控えめにし、栄養(ビタミン)バランスに注意した食事を心がける。(肉を控えめにしてその分多くの野菜を摂取するよう努める。)

⑫成人病予防に朝、5分間縄跳びをし、15分間早歩きのウォーキングを励行する。

その他...

どうですか?

64個具体的な方法を考え出せそうですか?

英語学習に王道はありません。

闇雲に頑張っても駄目なんです。

英語をモノにするには、明確な目標設定と期限、自己分析と効果的な学習方法と生活改善が必要です。やる気と強い意志が不可欠です。自分の生活においての英語学習の重要度や優先順位がはっきりしていればいるほど、目標達成の可能性が高まります。自己分析をして自分の現在の英語力・学習環境・学習方法をきっちりと掴むことによって自分にとって最も効果的な学習方法を設定できてそれを実行に移せます。また挫折する前に自分の生活態度にまで踏み込んで具体的な生活改善方法をも実践すれば、目標達成への道筋が自ずと見えてくるはずです。

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大人が変わる生活指導

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June 01, 2006

音声インプット重視の幼児英会話教育

幼児(未就学児)への英会話指導において耳を鍛えることは将来スピーキング能力を高める上でとても大切である。前回のブログ記事で小学生からは文字情報による言語習得が音声のみによるインプットよりも効果的であると書いたが、このことは就学前の幼児については全く当てはまらない。むしろ180度発想をひっくりかえさないといけない。幼児期においては文字をなるべく使わずに耳での言語インプットに徹するべきである。言葉を変えると、幼児期においては文字として言語を処理する左脳教育を重視するよりも、耳に聞こえてくる音を目で見えるイメージとして視覚的に処理する右脳を鍛えるべきである。

元祖「英語耳」の第一発案者である故アルフレッド・トマティス博士(フランスの聴覚心理学者)は「人は聞き取れない音は発することができない」という原則を最初に発見した学者である。私達の発話は声がコントロールするというよりも耳がコントロールしているのである。人は自分が発した声を骨伝導(発した声の空気の振動を鼓膜で聞き取るということ以外に自分の発した声紋の振動を蝸牛内のアブミ骨という小さな骨の振動を耳で感じて自分の声をセルフモニタリングしている。つまり日本語にない英語特有の音(日本人の苦手な「r」と「l」や声帯を使わずに息だけで発する「s」や「th」などの歯擦音)の聞き取りができないと自分でも正確にその音を出せないということである。英語独特のリズムやイントネーションに乗っかった個々の英語音をハッキリと耳で捕らえて、自分の耳でネイティブの発音と自分が発する英語音を確りと比較・コントロールすることによって、自分の発話をネイティブのそれに近づけることができる。

博士によると人は「オギャア」と母親の体内から外界へ生まれ落ちた時には、既に母語を効果的に聞き取ることができるように耳がチューンアップされている。日本人の母親から生まれた赤ん坊は日本語の音に反応し日本語特有のリズムやイントネーションに乗っかった日本語音が聞き取り安いのだ。また英語を話すイギリス人の母親から生まれた赤ん坊はイギリス英語が聞き取り易い耳の状態になって生まれてくる。皆さんよくご存じのように胎児は母親の体内で母親の言葉を耳及び体全体で母親の声の振動を感じ取り上記アブミ骨を通して聞いている。言葉の意味を理解するというよりも、母語の特徴を脳に耳を通じて刷り込んでいるという感じだ。著名な生成英文法学者ノーム・チョムスキーが提唱していた生得的な言語能力とは母親の体内で母語の音声的な特徴を脳に刷込んだ結果としての潜在的な母語習得能力であると私は理解している。

幼児期においては文字情報から単語をたくさん覚えたりするよりは英語音を正確に確りと聞き取れる耳を鍛えるべきである。年齢が低ければ低いほどまだ耳ができあがっておらず、外国語としての英語音を聞き取れる耳を育成し易いからである。(トマティス博士によると人の耳は12才で完成する。ちょうど小学校卒業時に成人と同じ音域を聞き取れる耳の機能が完成するのだ。)単語や文法の習得はある程度年齢がいってからでも鍛えられるが耳はそういう訳には行かない。将来、英語音を正確に聞き取り、ネイティブに限りなく近い発音で発話できるために、幼児期の間に徹底的に英語を聞かせて耳を鍛えておくことは非常に大切である。

英語の歌による英語独特のリズム・イントネーションの習得も効果的である。ただし、BGMのように英語をただ単に流しておいて子供の耳に入れる(hearing)だけでは、いつまでたっても英語を聴き取って(listening)その意味を理解できるようにはならない。つまり聞かせた英語を理解出来るようにするビジュアルエイド(聴いた音の意味を視覚として理解させるイラストや写真・ビデオなど)が必要なのである。Natural Approachを提唱した言語学者クラシャンによる(意味の)理解可能なインプット(comprehensible imput)でないと英語の聞き取り訓練としては不十分だ。幼児期だからこそアルファベットや日本語という文字情報を介さずに英語を英語のまま理解出来るようにトレーニングする。その為にAV(オーディオ・ビジュアル)が効果を発揮する。

帰国子女と英語圏への大学・大学院レベル留学経験者との違いは、英語の発話におけるネイティブライクな発音と発声であろう。突き詰めれば幼少期にネイティブの英語音をどれだけ聞いて耳を鍛えたか否である。英語を正確に聞き取れる耳の善し悪しはリスニング力のみならず、将来における英語の発音・発話の善し悪しにも繋がるということである。

PR:エース英会話スクールでは幼児への指導で英語の歌・カラフルなカードやCD・ビデオ(DVD)教材を積極的に使用して目からの視覚的なインプット・耳からの音声的なインプットを最大限に取り入れて、(意味の)理解可能なリスニング指導を実践している。

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April 23, 2006

帰国子女や海外留学経験者に負けない英会話力を日本国内で身につける

日本国内で英会話をマスターすることはできるのであろうか?

私は年間250名程、日英バイリンガルに限りなく近い講師応募者に英語でインタビューをしている。かれこれ700名近くの方々にインタビューしたので私の感想をまとめてみることにした。子供や大人に英会話を指導するという応募者で、英検準1級以上またはTOEIC830点以上と応募資格を定めているので、少なくとも英会話に自信のある人達のみ応募してくる。(100人に2~3人は、これでよく準1級に合格したな?、TOEIC830点をクリアしたな?という人がいるが、95%以上の応募者はなかなかイイ線行っている人達だ。)

応募者の約70%は幼少または小中学校の頃に英語圏に暮らしていた、いわゆる帰国子女である。また、約20%は英語圏の短大・大学・大学院を卒業した正規留学経験者である(以下海外留学組と呼ぶ)。残りの約10%は帰国子女でもなく正規海外留学経験者でもない。1ヶ月程度のホームスティ・海外語学研修や海外旅行を除いて日本国内で英会話をマスターした人達、日本の短大や大学・大学院を既に卒業したかまだ通っている人達である(以下国内組と呼ぶ)。

もちろん個人差がかなりあり、帰国子女が100%バイリンガルかというと、そういうことはなく、5年も海外に生活していたのにこの程度か?表面的な発音や発話はネイティブ気取りで英語を話しているが話しの中味がお粗末だったり、文法的なエラーが目立ったりということもある。ああこの人は帰国後にあまり英語を勉強してこなかったのだなと思える人も少なくない。

逆に長期(6ヶ月以上)の海外生活経験や正規留学の経験がなくとも、限りなくバイリンガルに近い人達もたくさんいる。ああこの人は英語が好きで相当頑張ってきたのだなと感心させられることも少なくない。勿論個人の努力や外国語習得の才能や親から譲り受けたDNAにも大きく左右されるのであろうが、国内組の実力は海外留学組や帰国子女と比べても遜色なく、帰国子女と言っても誰も疑わないようなネイティブに限りなく近い英語を発話する人に出会うと、驚きと嬉しさが込上げて来る。

海外に出なくとも国内で幼少時よりネイティブな英語をいろいろなメディア(英会話学習用のCD、ビデオ・DVD・英語の歌・TVなど)を通して耳に入れることが出来る。洋書を扱った大きな書店に行けば欧米人の幼児や子供達が楽しむ絵本やカード・ゲームなどがすぐに手に入る。幼少から英会話スクールに通ったり、英会話の家庭教師を子供に付けたりすることもできる。

しかし幼児期に英語の学習を始めなくとも、正規に中学で初めて英語を学習し始めた人でも中学・高校・大学までの10年間でかなりのところまで英会話をマスターしている人達も少なくない。決して大学で英語や英文学を専攻していなくとも大学の4年間みっちりESS(English Speaking Society)という英語クラブの活動に没頭すれば4年間の正規留学をして帰国した海外帰国組にひけをとらない英語を話す人達が延べ何万人もいることを私はよく知っている。

かく言う私も、中学で英語を学習し始めるまでは英語をまったく習ったことがなかったし、中学校の英語の成績は惨憺たるモノであった。公立中学にも拘らず、1年2年で教わった先生が特別な授業を行っていた。日本人の先生なのに日本語をほとんど使わずに英語でレッスンを実施したのだ。教科書の内容を画用紙に絵を描いて英語で説明していた。小学校時代に塾や英語教室で英語を既に学習し始めていた人たちは何となくわかっていたようだが、私のように中学校から英語を一から始めた者達にとってはほとんど理解できなかった。5段階評価の通信簿で英語はいつも1に近い2であったと記憶している。英語の時間はまったくちんぷんかんぷんで苦痛の何物でもなかった。中3で英語の先生が代わり、塾でも英語を学習して、少しわかるようになった。高校1年生の時に教え方の抜群に上手い英語の先生との出会いが私の英語との関わりの大きな転機だった。高校1年生から英語への興味に目覚め、いつかは欧米人と自由に英語を話せる自分になれることを夢見て、それこそ無我夢中で英語を勉強した。その甲斐あって、その高校英語の恩師と同じ大学の英語学科に進学できた。

英文学を学ぶ英文学科ではなく実用英語を学べる英語学科を選んだつもりであったが、大学ではまだまだ教養としての英米文学を翻訳するという古典的な指導方法で教える英語購読の授業がほとんどであり、いつかは欧米人と自由に英語を話せる自分になるという夢は一生夢のまま儚く消え行きそうで英語への学習意欲を失いかけた2年生の春に親友から「このままあと3年間大学の講義をどんなに一生懸命に受けて成績がオール優であっても絶対に英語は自由に話せるようにはならない!」と宣言された。そして親友と2人で1年遅れであったがESSのドアをノックした。自分でも恥ずかしくなるくらい英語がまったく話せなかった私でもESSの活動(ディベートセクションに所属し、土日祝祭日なし夏休み春休みなし、朝8時から夜9時頃までクラブ活動に没頭して寝ても覚めても英語ディベートのことを考えていた)を通してめきめき上達して、卒業の際には自分の夢にもう手の届くところまで来ていた。

国内組であっても英会話の学習の仕方さえ間違わなければかなりのところまで来られる。帰国子女や海外留学組にだって負けない位の英語コミュニケーション能力を身に付けられる。

語学の才に決して恵まれない私でさえ、高校からの7年間でかなりのところまで上達できた。今の子供達は小さいころから英語を学習する環境に恵まれている。私が通ってきた急な傾斜の岩のゴツゴツした山道よりも遥かに傾斜の低い安全な道を親に見守られ先生にガイドされて確りとした足取りで歩み続ければきっと私の目指した夢「いつかは欧米人と自由に英語で話せる」にたどり着くことが出来るはずである。

PR:エース英会話スクールではこの夢を一人でも多くの人達に達成していただけるように講師と一丸となってレッスンを実施しています。

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March 27, 2006

小学生以上の入門学習者への英会話指導では読み書きは必要ないか?

小学生以上の入門学習者への英会話指導でテキストを使わずにリスニングとスピーキングのみ指導している英会話スクールがある。小学生以上の英会話入門者への指導ではリーディングとライティングは指導しない方が良いのであろうか?言語学的には文字を教えるかどうかということである。

オーラルでの言語習得において文字は邪魔モノなのであろうか?確かに幼い子供は外国語でもその音声を忠実に聞き取る耳を持ち、聞いた音を母国語の介在なしに忠実に再生できる。就学前の幼児への指導であれば音声オンリーの指導もありであろう。

しかし学校でも日本語の読み書きを本格的に学んでいる小学生以上であれば、英会話でも文字を積極的に教えるべきだ。今までは音声のみで理解していたことが文字を見る(読む)ことによって文字データの言語として認知されるようになる。言葉の配列や細かい音のつながりをしっかりと認知するようになる。ワッチャーネィム?と音声で認知していた表現、名前を聞かれていることは分っていたが、実はWhat is your name?という四つの単語が自然に発話されるとワッチャーネィムと聞こえることを理解する。そしてWhat'sは何?という質問であるということに気づき、yourはきみの、nameは名前のことだと気づく。What'sは何?という質問であることに気づけば、あとは芋づる式に、What's this?  What's that? の質問も理解でき、What's your mother's name? fathermotherという単語を習えば、お父さんお母さんの名前を聞かれていることが理解できる。

英語圏で暮らしていて英語を第2言語(第2生活言語)として獲得するのではなく、日本に生活していて英語をまったくの外国語として学ぶ場合において、文字を導入せずに音声のみで指導するならば、英会話習得の効率がとても悪くなる。何故ならば、音声のみで指導したことは定着せずにすぐに消えてしまうからである。確かに子供は大人と比べて外国語音の聞き取り及びその忠実な再生には優れている。しかしながら、例えば外国人講師の後につけてスムーズにリピートできた単語なりセンテンスがそのまま定着するかどうかという点に関しては心もとない。レッスン後にかなり復習しないとすぐに忘れてしまう。英語圏に暮らしていて新たに習得した単語やフレーズを日常生活の中で繰り返し聞き、自分でも実際のコミュニケーションで使う場面があるのであれば自然と定着するであろう。しかし、日常生活が日本語にどっぷりと浸かった環境で、同じことを期待することはできない。外国語として英語を学ぶ場合には、音声だけでのインプットにはかなり無理があり、それを補完する意味で文字として英語を確りと認知する必要があるのである。

大人の場合にも同じことが言える。例えば今まで学習したことのない英語以外の外国語を音声だけで学習することは困難を極める。先生やCDの後につけて言えたとしても、それを定着させるには何度も何度もその表現を言う必要があり、すぐ忘れてしまうので、忘れてしまわないうちに復習が必要である。

文字として目で見て、確りと文字を声に出して読み、更にその表現を書いてみることによってはじめて、音声だけのインプットとは比べ物にならないくらいに確実に定着するはずである。

別な例を挙げると、就学前幼児は英語圏で1~2年ほど生活し、近所の子供達と英語で遊ぶ環境を整えてあげるだけで、英語がかなりしゃべれるようになって帰ってくる。しかし日本に帰って来て、英語を話せる環境を作ってあげないと、せっかく獲得した英語を話す能力はすぐに消えてしまう。獲得も早いが喪失も早いのである。これに対して小学校以上で現地の学校で確りと文字で英語をインプットしてきた子供達は日本に帰ってから、英語を話せる環境がなくとも、CDなどで英語を聞いたり、英語の本を読んだりすることによって英語力を維持することができ、そう易々と獲得した英語力を喪失してしまうことはない。

就学したらできるだけ早い段階で文字の学習を開始すべきであり、耳だけに頼るのではなく目や口そして手でその単語や表現を体験させることが大切である。英語を目で見て理解でき、声に出して読め、更に書けるようになると、リスニングとスピーキングが飛躍的に伸びる。小学生が学校でも文字を学習して自分で日本語が読み書きできるようになって日本語の聴解力と表現力が飛躍的に伸びることと理論的にはまったく一緒である。国語つまり日本語を文字なしに音声だけで指導する場合と読み書きを指導する場合の日本語習得における効率を考えると明らかに読み書きを指導する方に軍配が上がる。

中学高校でのいわゆる学校英語、読み書き中心の指導方法が批判されるが、批判されるべきは英語を日本語に訳す教え方である。日本語に翻訳するのではなく、英語を日本語に置き換えずに、英語のまま読解または聴解する練習が必要であり、それができるようになって初めて、速読・速聴、直読直解・直聴直解の力が養われ、今流行りの表現をあえて使うならば、日本語を介在しない英語回路または英語脳ができあがる。

文で発話する際の英語文の組み立て、つまり自分で英語を発話する場合には単語は意識されるべきであり、無意味に表現を丸暗記したものだけで発話することはお勧めできない。ある表現を教えたら、その表現を使った質問に自分の言葉で答えさせたり、質問を作らせたりするクリエイティブな練習をすべきである。自分の言葉で質問に答える、自分で相手に尋ねたい質問を作る。このクリエイティブな作業なくして、自己表現としてのスピーキング力は伸びず、英語はいつまでも話せるようにならないのである。更に自分で作った英文を文字として書かせてみることは定着という観点から非常に大切である。

まとめると、小学生以上の英会話入門学習者への指導においてはスピーキングとリスニングだけに力を入れるのではなく、リーディングとライティングもバランスよく鍛え、4技能の集大成としてオーラルコミュニケーションを教えることが必要である。英語でのコミュニケーションスキルの育成、つまり英会話の上達において、4技能に磨きをかけることは遠回りのようで最短の道なのである。

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March 10, 2006

本当に子供は語学の天才なのか?

「幼児や子供は外国語をスポンジのよう吸収してすぐにマスターしてしまう。また英語をたくさん聞いていれば難無くそれを真似て言えるようになる。」と一般的に定説の如く信じられている。本当に子供は大人よりも外国語の習得は早いのであろうか?

確かに親の海外赴任の為に一家で英語圏に住むことになった場合、大人よりも子供の方が英会話の習得が早い。幼稚園児や小学生・中学生であれば2年位現地の幼稚園や小中学校で英語のネイティブスピーカーに囲まれて生活すればかなり上達する。発音や発話がかなりネイティブに近づき、日英バイリンガルになれる素地は十分に身につくはずだ。英語圏で生活して現地の学校に通ってall Englishの授業を1日中受けて、学習した英語を友達や日常生活で使うという英語環境に浸り切ればこれは事実であろう。つまり母国語を学ぶのと同じ環境に居れば英語をあたかも日本語と同じように吸収して身につけることができるのだ。日本語という母語が既に確立されている大人はこうは行かない。日本語が介在して英語の自然な習得を妨げてしまう。

しかしながら、日本に居て日常の会話がすべて日本語という日本語環境において英語を外国語として学習する場合、同じことが言えるのであろうか?英会話スクールや教室に通って週1回1時間足らず英語に触れることによって子供は大人よりも早く効果的に英会話をモノにすることが出来るのであろうか?私はこの問いに対しては声を大にして、「そんなことはない、学校英語で少なくとも6年間英語の授業で学んだ英文法の基礎や基本語彙を持っている大人の方が子供よりも遥かに吸収が早く英会話力が身につく」と言い切れる。つまり、日本に住んでいて日本語の環境で英語を外国語として学ぶ場合には、子供が語学の天才だとは決して言えないのである。週1回1時間足らずのネイティブのレッスンをオールイングリッシュで数年間受けて英会話がマスターできるほど英語は日本人にとって甘くはない。英語圏の人たちにとって日本語をマスターすることが非常に難しいのと同様、日本人がまったく異なる言語体系や音を持つ英語をマスターすることはとても難しいのである。同じインドヨーロッパ語族の母語を話すヨーロッパの人々が易々と英語をマスターするのとは訳が違うのである。

発音習得は別として、新しい単語を習得することや英語表現を覚えて実際の会話で応用することなどについては大人の方が遥かに早く効率的である。このことをしっかり認識していないと大変なことになる。子供は単語を覚えるのに大人の1.5倍から2倍かかるし覚えてもすぐに忘れてしまう。定着させるためには大人以上に何度も何度も繰り返し復習して定着させなければならない。英語教育の提供者はこのことをしっかりと認識すべきだ。「子供は語学の天才!早期に始めれば子供は楽に無理なく効率よく英会話を身につけることが出来ます。」と日本にある英会話スクールや英語教室が広告・宣伝で謳うことはまったく看板に偽りありである。

ところで、残念なことに公立の中学高校で教えているのはあくまでも英語である。英語を使ってのコミュニケーションを教えているわけではない。多くの英会話スクール、英語教室も英会話レッスンといいながら英語を教えている。

では英語を教えるということと英語によるコミュニケーションを教えることの違いは何かというと?

レッスンの中でどれだけ英語による実際のコミュニケーションが先生と生徒の間にあるかということだ。ホワイトボードで文法の解説をしたり表現の意味を説明したりすることはもちろんのこと、発音指導や表現のリピートも厳格にいうと英語を教えているのであり、コミュニケーションを教えているのではない。最近はリピーティングやシャドーイングなどが流行りであるが、大手英会話スクールで学んできた子供達はやたらと先生の発話をリピートしたがる。質問して答えを求めているにも拘らず、質問に答えるのではなく先生の質問を無意識にリピートしてしまう。これはクラスにおいて講師が絶えず生徒にリピートを強要することによって生じる弊害である。つまり先生と生徒の間で英語でのコミュニケーションが成立していないのである。4人以上の生徒がいる教室で指導する場合、先生が生徒1人1人と英語でのコミュニケーションを成立させることはかなり難しい。どうしても1対多のコミュニケーション、つまりクラス全体の生徒に対する英語の指導に終始してしまいがちである。その結果として先生の発話やCDのリピートが多くなる。いくら上手にリピートできるようになったとしても、実際の会話でその表現を使ってみないことには会話力は伸びないのである。リピーティングだけで会話力が伸びるのであればCDやビデオ教材で十分であり、英会話スクールはビジネスとしてまったく成り立たなくなってしまう。

CDを使って自宅で独習する場合にはリピーティングはそれなりに効果的だ。しかし、れっきとした講師が英会話を指導するレッスンにおいては、話は別だ。メカニカルなリピートをなるべく少なくして、生徒に英文を模倣させるのではなく英文を自分の力で組み立てさせる。テープやCDでのリピーティングプラクティスを講師の声でクラスにおいて実践することはまったくノンセンスだ。講師はできるだけ受講生に発話の機会を与え、自力で話すことを促すべきだ。生徒が英語で表現できなかったり間違った言い方をしたりした時にのみ講師は助け舟を出せばよい。最初から講師が模範解答を作ってそれを生徒にリピートさせ習得させようという教え方ではレッスンが単調でおもしろくないし、生徒はいつまでたっても自分の言葉で話せるようにはならない。

What's your name? My name is ... How are you? I'm fine, thank you. What do you like to do in your free time? I like to go to see the movies. など最初は1問1答でも構わない。先生と生徒の会話が成り立てばよい。1問1答がスムーズにできるようになってから、答えのバリエーションや2文3文で応えること、相手に質問し返すことなど各種コミュニケーションテクニックを身に付けていけばよい。

英会話スクールに子供を通わせている親御さん達は驚かれるであろうが、意味のあることを先生と英語でコミュニケーションするという始めの1歩を子供が踏み出せるかどうか?そこに幼児・子供の英会話マスターへの成功が隠されている。

先生と生徒の1対1のコミュニケーションを成立させる最大のレッスン形態はプライベートレッスンであり、いかに生徒に実践会話の機会を講師が与えられるかにその効果がかかっている。実践会話の場、これこそ英語の苦手な日本人が喉から手が出るほど求めているものなのだ。

PR:エース英会話では生徒と先生が英語でコミュニケーション出来ることを最大の目標としてレッスンを実践しています。

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January 09, 2006

日本人の甘えの構造と英語によるコミュニケーション

もう25年前の話しであるが、私が米国に留学して最初に一番驚いたのは大学のカフェテリアでサンドウィッチを注文した時だ。
「とてもおいしいので是非食べてみて下さい。」とオリエンテーションで勧められたのでカフェテリアに行って早速注文した。当時の日本でサンドウィッチと言えば、ハムサンド、玉子サンドや野菜サンドなど種類が決まっていて既に調理されたものがパックされたものであり、同じような物を想像していた。

しかし、サンドウィッチセクションに行って、サンドウィッチが欲しいと言うと、いきなり
1)Which would you like for bread? White, rye or whole wheat?
とパンの種類を聞かれて、戸惑ってしまった。

サンドウィッチの材料がすべて取り揃えてあり、注文に応じて特製のサンドウィッチをその場で調理してくれる仕組みだったのだ。

サンドウィッチのパンといえば、それ用に薄くスライスされ耳が除かれた白い食パンしか知らなかったので、White, rye or whole wheat?と聞かれてもrye(ライ麦パン)は聞いただけで食べたことがなく、whole wheat全粒パンにいたっては聞いたこともなかったので、取り敢えずWhite, please. と答えた。

その後も、
2)パンには何を塗りますか?(マヨネーズ、マスタード、マーガリン)
3)野菜は何を挟みますか?(レタス、オニオン、トマト、ピーマン)
4)野菜につけるドレッシングは?(バジルマヨネーズ、チリトマトソース、シーザードレッシング、ハニーマスタード、サウザンアイランド、オイル、ビネガー、ソルト、ペッパー)
5)メインに何を挟みますか?(ハム、ツナ、ターキーブレスト、エッグ、ローストチキン、ローストビーフ、ベーコン)
6)他に何かトッピングしますか?(スタンダードチーズ、チェダーチーズ、クリームチーズ、ピクルス、オリーブ)

サンドウィッチが出来上がるまで6個も質問されたのだ。ろくにパンの種類もわからなかったので、あとはしどろもどろで聞き取れた物を調理師に伝えることが精一杯だった。汗ダクで、心臓はドキドキ、足はガクガク、疲労感と自分の無知への嫌悪感から食欲は一気に失せて、食べたサンドウィッチの味は全然覚えていない。適当に注文したので美味しくなかった事だけは確かである。

「こんなにたいへんな思いをして注文するくらいなら、既に出来上がった日本のサンドウィッチの方が楽でいいや」と苦々しく思った。

これは本で読んで知ったことだが、レベルはまったく異なるが私と同じような経験を著名な心理学者の河合隼雄氏がアメリカに留学中にしたそうだ。

河合氏はサンドウィッチではなく、ある家庭で模様されたパーティで着くや否やホストから「飲物は何がいいですか?」と尋ねられたそうだ。ホストと河合氏の会話はこうだ。

「飲物は何になさいますか?ビール、ワイン、ウイスキーがあります。ソフトドリンクもいろいろ用意していますので、好きなお飲物を召し上がって下さいね。」

「ウイスキーを戴きます。」

「スコッチにしますかそれともバーボン、モルトもありますよ。」

「スコッチをお願いします。」

「水割り、ロック、ストレート、それともソーダ割りにしますか?」

「水割りにしていただけますか。」

河合氏はホストの質問にちょっとうんざりして、「そんなに丁寧に尋ねるよりも何でもいいから、ただ飲物を出してくれたほうがリラックスできて嬉しかったのに」と思ったそうだ。

有名な日本人論「甘えの構造」の著者で精神科医の土居健郎氏によると、私や河合氏がうんざりした原因は一般の日本人が国民性として持っている他人への依存(甘え)にあるそうだ。

確かに日本人の国民性も少しずつ変化してきているが、土居氏の分析は次のとおりだ。

アメリカ的なお客のもてなし方の極意は、一人ひとりのお客様の個人的な希望や欲求を出来るだけ詳しく聞いて、それを充足してあげることにある。だからこそたくさんの質問をせざるを得ないのである。

これに対して、日本的なお客様のおもてなしは、どんな食べ物や飲み物であろうと、選んだり希望を述べさせるという責任を出来るだけお客様に負担させずにホストが気遣うものである。

日本人の客として、河合氏や私はホストに気遣ってもらうこと、ちやほやされること、つまり「ホストに甘える」ということを期待してしまったのである。

相手に甘えるという行為は日本人の日常的なコミュニケーションにおいても無意識に行われている。

若い夫婦は別であろうが、日本人の典型的な熟年夫婦(夫が働き、妻が家事を担う)の会話で、

夫は帰ってくるなり、「風呂にする」と言い、着替えて風呂に入る。風呂から出るといつも通り(言わなくとも)冷えたビールが食卓に出され、ビールを飲み終わったタイミングで、(何もいわなくとも)妻がご飯を出す。更に夫が夕食をほぼ食べ終わるタイミングでお茶が出される。

これはあまりにもステレオタイプな古典的日本人夫婦であるかも知れないが、少なくとも私の父と母は上記のような日常を送っていた。

昼間、家族のために一所懸命に働いて疲れているであろう夫を妻は気遣い、帰宅する時間を見計らって風呂を焚き、季節やその日の気温に応じて夫の一番好む冷たさになるように冷蔵庫にビールを入れて、夕食の準備を整えて夫の帰宅を待つ。夫が「風呂の前に飯にする」と言われてもよいように風呂と夕食を同時に準備しておくのである。

このような古典的な日本人夫婦間において、夫は完全に妻に「甘えて」いる。「風呂を沸かしてくれ」「ビールを出してくれ」「ご飯をよそって持ってきてくれ」「お茶を注いでくれ」などと一切言わなくとも、妻が夫の欲求を察して充足してくれる。

何も言わなくとも自分の欲求を相手が察して何でもやってくれるのだ。言葉に出して言わなくとも自分の真意を相手が察して理解してくれる。これが日本人の「甘え」なのであろう。

「甘える」と聞くと、子供が親に甘えることを想像する人が多いと思うが、子供が母親に甘えて何でも、言わなくても母親が自分の世話を焼いてくれる心理と、上記のように大人が他の大人に対して「甘える」という心理は限りなく近いものだと私は思っている。それだからこそ、土居健郎氏は「日本人の甘えの構造」とあえて「甘え」という表現を使ったのであろうことは想像に難くない。

私には今年8歳になる娘と10歳になる息子がいるので、子供達と母親の関係を観察してきた。子供が母親に「甘え」ている間は親は子供の面倒をせっせとみるが、ある時期が来てもっと自立してほしいと思えば、いままでやってあげていたことを敢えてやらずに子供に自分でやることを促す。最初、子供達は母親に甘えて自分で出来る事も母親に「やってやって」とせがむが、自分でできることを母親がもうやってくれないと自覚すると自分でやるしかないので自分でやるようになる。そうこうしているうちに子供達は母親から心理的にも行動的にも徐々に自立してゆく。そのうち、母親が自分のために用意した洋服が気に入らなければ自分で気に入った服をタンスから引っ張り出してきたり、出された食事で自分が食べたいものだけ食べて、食べたくないものは残すし、自分が食べたいものが冷蔵庫に入っていることを知っていれば自分で取り出してそれを食べるようになる。

ある意味、お互いに相手の気持ちを察して大人がお互いに甘えあえる日本社会は素晴らしいと思う。しかし、外国人に日本人と同じように甘えられると考えるのはよくないことだ。

米国人女性と結婚した日本人の夫に対して「夫は自分を愛していると思って結婚したにもかかわらず、夫は自分のことを愛しているといってくれないので確信がもてなくなった」という不満で心理カウンセリングを受けたという話しはよくあることだ。夫の言い分として、「自分は妻のことは心から愛しているが、それを言葉でどう表現してよいのかわからないし、結婚した後も愛しているよと口に出して言うことは照れくさいしあまりしたくない。愛していることは口に出さなくとも普段の行動から十分に妻に伝わっているはずだと思っていた。」と言うはずである。

これも、「言葉に出さずとも自分の気持ちを相手が察してくれてしかるべきだ」という、妻に対する夫の一種の「甘え」と解釈することができよう。

再び私の留学中の経験だが、私は日本人留学生としてシアトルの米国人家庭にホームスティしていたことがある。ある日、隣人のお客さん(弁護士)の男性をディナーに招いて家族と一緒に食事をしていた。ホストファーザーが私をその人に「日本人からの留学生だ」と紹介してくれたので、
Nice to meet you. My name is Toshikazu Ichimura. I come from Tokyo and I'm majoring in linguistics at Seattle University.
と自己紹介すると、その人はいきなり、
Oh, really? What kind of linguistics do you study? What made you decide to study linguistics at Seattle University? What is a major issue in Japan? Cars? (日本では今何が問題になっているのですか?自動車ですか?)などと立て続けに質問してきた。私は質問に上手く答えられずに赤面してしまったことを憶えている。特に最後の質問には、Yes, probably.(はい。多分そう思います。)としか答えられなかった。当時は日米間で自動車の輸出に関して激しい貿易摩擦が起こっていた最中だったので、日本人としての私の意見を聞きたかったのであろう。
「初対面なのだからもう少し簡単に答えられる質問をしてくれてもいいのに」と自分の不甲斐なさを棚に上げて心の中で叫んでいた。少なくとも私に対して興味を示し、いろいろと質問してくれたにもかかわらずである。

パーティなどで初めて会った英語圏の人との英語でのコミュニケーションの中でこのようにいろいろと質問されて上手く答えられずにちょっとうんざりした経験をお持ちの読者も少なくないと思う。特に日本人は自分の意見や出張をハッキリとダイレクトに、しかし攻撃的でない方法で述べることが苦手とされている。私は学生時代に英語ディベートを散々やったので、どうも自分の主張を述べるときに攻撃的になってしまう。

以上述べてきたように、時として日本人の国民性、日本式コミュニケーション方法が英語によるコミュニケーションの障害物となり得る。

特に、相手に言わなくてもわかって欲しいという「察しの文化」に根ざした「甘え」や、「遠慮」「控えめ」を美徳として自己表現をしないことは、英語でのコミュニケーションにおいては何の役にも立たない。

英語でのコミュニケーションにおいては、逆に自分の好き嫌いをはっきりさせて、自分の希望や欲求をきちんと表現し、自分の意見や主張を明確にしたほうが上手く行く。

私がこの記事で主張しているのは、「英語圏の意思疎通文化の方が日本のそれよりも優れているので、皆さん見習いましょう。」ということでは決してない。
英語でのコミュニケーションの時には英語文化の意思疎通方法を取った方がよりスムーズなコミュニケーションが可能だということだ。

話しをしている相手や場面状況に応じて、話し方を変えたり言葉を選んだり、どこまで踏み込んで自分の意見を主張するかなど、上手な使い分けが出来れば良いのである。

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January 01, 2006

アニメ映画「あらしのよるに」で英会話を学ぶ意義を考える

アニメ「あらしのよるに」を小学生の子供と見てきた。絵本作家、木村祐一氏のロングセラーの絵本が原作で、TBSテレビの「テレビ絵本」が好評を博して、ついにアニメ映画で公開された。子供の絵本が原作なので常識を超えたファンタジーである。人間で言えば10代の若者であろう山羊の「メイ」と狼の「ガブ」が嵐の夜に暗闇の山小屋で出会い、自分たちの群れ(狼=食うもの、羊=食われるもの)を裏切ってまでその友情を貫き通そうとする。

私は何故「狼」と「羊」という敵対関係がある物たちが友情で結ばれるに至ったかに興味があった。英語教育のブログを書いている私の解釈はこうだ。明るい昼間に2匹が出会っていたならば、言葉を交わす前に間違いなく羊は狼の餌食となっていたであろう。しかし2匹は相手の姿かたちが見えない暗闇で出合って、(子供の絵本なので日本語で)言葉を交わした。激しい雨に打たれ恐ろしい雷を逃れて辿りついた小屋で同じ境遇のものに会えば、ちょっと安心して心を許して会話するはずである。しかも気が合えば話しは弾む。話しが弾めば友情だって芽生えるかもしれない。お互いに相手が誰であるかがわからなくとも、究極それが敵味方であろうとも共通言語でのコミュニケーションの力は絶大である。所詮は子供の絵本のファンタジーで、現実にそんなことはあり得ないと思われる人も多いかと思うが、最初の出会いの場面で私は別な映画の1シーンを思い出した。

実在のピアニスト、シュピルマンの実体験を綴った回想録を基に、戦火を奇跡的に生き延びたピアニストとその生還に関わった人々の姿を描いた映画「戦場のピアニスト」(自身もゲットーで過ごした過酷な体験を持つロマン・ポランスキー監督作品)である。収容所を脱走した主人公のユダヤ人ピアニストが戦火の中逃惑い、終戦間近のある夜に逃げ込んだ空家でドイツ人将校と鉢合せしてしまう。ドイツ人将校は即刻銃殺することもできたが、将校はユダヤ人にいくつか質問し、シュピルマンがプロのピアニストであったことを聞き出す。そして将校はユダヤ人にその家にたまたまあったピアノを弾かせた。その演奏にとても感動したドイツ人将校はシュピルマンを匿う、しかも十分な食料と自分のコートまで与える。感動的なピアノ演奏という強烈な要因があったが2人の間に友情が芽生えたことは間違いなさそうである。もしも2人にドイツ語という共通言語が存在しなければシュピルマンはピアニストであることを打ち明ける前に銃殺されていたかもしれない。

上記2つの例は類い稀なケースであるが、一般論として異文化および異境遇な人間の間にコミュニケーションできるだけの共通言語が存在すればお互いのことを理解し合え、気が合いさえすれば友好関係を築くことができるのではあるまいか。

先日、コソボ紛争におけるセルビア系住民に対するアルバニア系住民の迫害の過去を乗り越えて個人レベルで友情関係を育んでいる人々がいることをテレビのドキュメンタリーで見た。やはり友好関係の第一歩は言葉による対話であった。

日本の歴史教科書問題、小泉首相の靖国参拝、領土問題でギクシャクした関係が続いている日中、日韓関係。反日運動のニュースをテレビや新聞で見聞きしてとても残念に思っているのは私だけではなかろう。

私には個人的に中国人と韓国人の友人が数名いるが、英語以外の外国語ができないので、いつも英語で意思疎通している。彼らとは少なくとも英語を媒介として、個人レベルではあるが相互理解し、交友関係を維持できている。

英語をコミュニケーションの道具として学ぶ意義のひとつは、まさに異文化間での相互理解と交友関係にあると、子供と「あらしのよるに」を見て強く感じた。

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December 18, 2005

英語圏の社会的な話し方のルール

日本人が英語をもっと上手に話せるようになるためには、次の3点を実践する必要があると前の記事に書きました。

1)「日本語的な発想で考えた日本語を英語に置き換える」ということをやめる。

2)「英語的な発想で考えて、英語の語順で表現する」という訓練をする。

3)「英語での話し方の社会的なルール」に則って実践会話練習をする。

だいぶ間が空いてしまいましたが今回の記事ではこの3番目のポイント、「英語圏の社会的な話し方のルール」について書きます。

英語圏の社会的な話し方のルールを知っていると、よりスムーズな英語でのコミュニケーションが可能になります。

例えばアメリカ人の知り合いに、 
 
Your English is very good.

と自分の英語を褒められたら、あなたは何と答えますか?

思わず謙遜して、

No, no, my English is not good yet.

と答えませんか?

日本語では普通の返答ですが英語では謙遜せずに素直に褒めてくれたことに対して、Thank you. とお礼を言うのが一般的な返答の仕方です。日本人は相手に褒められてそれをそのまま受け入れるというよりも、謙遜することを美徳と考えています。

同窓会などにとびっきりおしゃれして出かけて、「素敵なスーツね。お似合いだわ。」などと褒められても、「ありがとう」とは応じずに、「あらそうかしら、これ古いんですよ」などと必ずと言っていいほど謙遜します。

これを外国人との英語での会話でそのまま言ったらどうでしょう?
  
 A: You look really nice in your suit!
 B: Oh, really? This is actually very old.
 A: ???

せっかく相手の良いところを褒めたのに、賛辞を素直に受け入れないなんて変な人だなと誤解されてしまうかも知れません。またそう返答された外国人は何と言ったらよいか閉口してしまうかも知れません。

「謙遜の美徳」という文化的な価値観は日本人特有のもので、英語圏の「社会的な話し方のルール」にはそぐわないものだと思います。

別な例を挙げます。

お客様を「夕食などに」招待してお迎えする時、米国では
 
「さあ、お入りください。ワインもスコッチもビールもありますし、お料理もたくさん用意しておりますのよ。どうぞくつろいで、ご自由にお取り下さいね。」

などとたくさん飲物や料理を用意していることを強調します。
 
これに対して日本人は謙遜して、

「何もございませんが、どうぞ」などと言う事が普通でしょう。

外国人をお客様で迎えるときにそのまま英語で、

 We have nothing to serve you at home.
 But please come in.

と言ったら、お客様はちょっと気分を害してしまうかも知れません。

このように「褒める」「歓迎する」「謝る」「断る」「依頼する」など様々な言語行動(発話行為)についてそれぞれの文化で独自の「社会的な話し方のルール」があります。
 
使用言語の文化において文化的に異なる言語行動をしてしまうと「相手に誤解」されたり、それがその文化で良くないものであれば、「相手に不快」な思いをさせてしまったりする危険があります。ですから、外国人とその人の言語で話をする時に、相手の文化に対して
基本的なことは必ず押さえ、その文化での社会的な話し方のルールに則って発言すべきでしょう。

私たち日本人が英語で英語圏の人たちと会話する場合、英語圏での社会的な話し方のルールに従って英語で会話すべきだということです。逆の立場で、日本人と外国人の人たちが日本語で会話をする場合には、日本文化の持つ社会的な話し方のルールに従って日本語で会話すべきでしょう。

皆さんよくご存知のように、言語と文化(その言語を話す人々の生活習慣や考え方など)が密接に関連しているからです。英語圏の社会的な話し方のルールに則って発話すれば、自然に英語的な発想で英語が話せるはずです。つまり英語圏の文化が持つ社会的な話し方のルールを確りと学んでから会話をすると、よりスムーズな英語でのコミュニケーションが可能になるということです。

別の見方をすると、英語圏の文化が持つ社会的な話し方のルールに則って英語を発話することを心がければ、自然に英語的な発想で英語を話すことになるのです。

 
ここで問題です。
 
英語圏の先生に何か贈り物を手渡すときに、日本語では「つまらないものですが」と言葉を添えるのが一般的ですが、英語では何と言ったら良いでしょうか?

皆さんは、日本語を英語にそのまま置換えて、This is a trivial thing. などとはもう言わないはずです。

ヒントは、

「つまらないものですが」に隠されている言外の真意を考えて下さい。

日本語は「察し」の言語だとも言われています。最後まで言わなくても相手に自分の真意を察して欲しいのです。「つまらないものですが、お気に召せば幸いです。」というニュアンスが言外に含まれているのです。

英語でのコミュニケーションで言葉を最後まで言わずに相手に自分の真意を察してもらうことを期待することはできません。逆に自分の真意をストレートに言わないと相手には伝わりません。

ですから英語では、I hope you'll like it. と言葉を添えるのが適切です。

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November 27, 2005

これからの英語学習は「対話型」を目指さなければならない!

私は以前ブログでTOEICの点数をアップするという「受信型」英語学習はもう古い、これからは「発信型」英語学習だと書いたが、発信型英語学習という考えでもIPコミュニケーション社会には十分に適応できないことに気づいた。

TOEICが登場する前から学校英語は、「中学校から大学卒業まで10年間も英語を学習するにもかかわらず日本人は英語が話せるようにならない。」という決まり文句的な批判を浴びていた。そこで登場したのがTOEICである。大学受験に代表される受験英語から学習者を解放しビジネスの場面で真に使える英語力を測定するという触込みでTOEICはスタートした。しかしながらTOEICの約20年間の歴史を振り返ってみると、確かに内容的には現在はネイティブスピーカーでも使わないような表現や重箱の隅を箸でつつく様な細々とした文法ルールを問う問題は改善されたが、大学入試のための英語受験勉強とTOEICの点数を上げるだけのためのTOEIC対策学習は50100歩であるといわざるを得ない。

なぜか?

大学の受験勉強は長年読解のための英文法、長文読解というリーディング力(実は英語を如何に日本語に訳すかという翻訳能力または日本語に訳した上で内容を理解するという訳読力)に尽きる。明治の開国から第二次世界大戦終結までの、欧米の技術や最先端知識に追いつき追い越せという時代であれば、その技術なり知識を英文で書かれた書物で読解する必要性が高く、音声での情報収集は考えられない時代であったのであるから、英語学習の主たる目的が英文の読解能力の育成であったとしても、それは当然といえば当然である。

しかし時代とともに我々が必要とされる英語力は姿を変える。最近になって大学入試でリスニング力が問われるようになり、益々TOEICの大学入試との差別化が難しくなってきた。大学入試の問題も以前と比べると遥かに実用的なものになってきたが、もはやリーディングとリスニングを問うテスティングは時代遅れである。

しかしながら、「これからは自分から情報を発信しなければならない。つまりライティングとスピーキングの時代だ。」と声高に叫んだとしても、その考えはインターネットが普及する前までの考え方かも知れない。ビジネスの場面で、ビジネスレターを郵送したりテレックスで送信するという方法で情報提供したり、自社の製品や商品の優れた点をプレゼンテーションで発表するという一方向性の情報提供の時代はインターネットの普及と共に終焉した。今時、国際郵便でレターのやり取りをして商売をしている会社は存続していないはずだ。情報をレターという文字情報にして伝達する方法およびスピーチやプレゼンテーションという音声情報伝達手段で、原稿を予め用意し十分にリハーサルを踏んだ上で発表する準備された発表方法(Prepared Speech or Presentation)という形式のライティング・スピーキング、それらを象徴する一方向性の「発信型」情報伝達のための英語教育・英語学習だけでは事足りなくなってきた。

私が主宰している英会話スクールの社会人の生徒さんで英会話レベルは決して高くない人でも海外での学会や海外出張で英語でのスピーチやプレゼンテーションを行っている人は少なくない。予めスピーチやプレゼンテーションの原稿をネイティブ講師に手伝ってもらって作成、発音や声の出し方などネイティブ講師について十分に発表練習をすればそれなりのスピーチやプレゼンテーションはできる。しかし、そんな方々の共通の課題はまず発表後の質疑応答だ。スピーチやプレゼン直後のQ&Aセッションであれば予想の範囲内の質問を講師に作成してもらい答え方も予め用意して練習しておけば何とか切り抜けられるようだ。しかし彼らが本当に困るのはセッション後のパーティや食事会におけるいわゆる自由な場面での「対話」だそうだ。どんな質問が出るかはその場の雰囲気であり、どんな人と会話をするかによって話題も変わる。特にビジネスパーソンで接待する側であれば尚更である。硬い話題ばかりではないので、様々な話題に適応して英語で相手との会話を進めなければならない。

英会話力初級の人でも英語で準備したものをモノローグというかたちで「発信」することは可能であるが、何が話題として飛び出すかわからない自由な会話場面でのダイアログ、つまり「対話」には適応できないのである。「対話」においては、発信者としての自分の情報伝達が完了したとたんに、相手から質問や情報が提供され、それに即反応しなければならないからだ。情報伝達の「発信」準備時間が限りなくゼロに近づいている。

情報伝達における一方向性からの進化型は双方向性である。対面式の「対話」のみならず文字情報でのコミュニケーションにおいても「発信」準備時間が短くなってきた。電子メールにより外国とのやり取りでさえ相手がオンラインであれば瞬時に自分のメッセージが相手に届く、急いでいる場合には送信して5分も経たないうちに相手から返信が届いてそれに対してまた応答するという双方向での「対話」に近いかたちの文字情報コミュニケーションが可能になったのである。

また「高価な国際電話」という表現はすでに死語となった。最近の若い人はKDDが国際電信電話の略で、国際電話をかけるときには国際電話交換士を経由して3分数千円という高価な国際電話料金をKDDに支払わなければ海外の人と電話で話せなかったことを知らないだろう。IP電話・スカイプ・メッセンジャーなどインターネット網を使った双方向音声伝達ツールの普及により国際的な音声コミュニケーションの敷居は格段に低くなった。

もう、一方通行の情報発信のための「発信型」英語教育・学習の時代はすでに終わったのだ。これからはIP通信という時間的なロスのない双方向でのコミュニケーションの時代である。「発信型」ではなく「対話型」である。「発信型」が目指しているものはいかに自分の情報を「正確にわかりやすく、適切に」相手に提供し、それを受けた相手がその情報を読んだり聞いたりして理解、説得されるということが問題とされる。しかしながらこのような情報提供は一方向のモノローグである。これからは「対話」つまり即興性が要求される。自分が情報発信したらすぐに相手から返事が来る。すぐに返信してきた相手は、それに対するできるだけ早いリスポンスをこちら側にも求めるものである。国際的なコミュニケーションにおいて「即興性」が益々その重要度を高める。

前述のとおり「対話」とは対面での会話に代表される口頭でのコミュニケーション能力である。モノローグに対するダイアログである。「発信型」ではいかに効果的に自分の思いを表現して相手に伝えるか、その必要十分条件として「正確さ」と「適切さ」を追求してきた。「発信」と「対話」との相違はモノローグとダイアログとの違いである。

スピーチと会話との対比でもう少しわかり易く説明しよう。

スピーチでは聴衆に伝えたい自分の思いをまず文章にして、それから言葉として発する。自分が意図する意味が誤解されないように「正確に」「適切に」表現するように内容を吟味し十分な発表練習をしてからスピーチに臨む。意味の流れは直線的である。発表者(speaker)から聴衆(audience)へメッセージが言葉として伝達され聴衆がスピーチの意味を理解する。多くの場合、スピーチの原稿は予め作られ、言うべき英文は出来上がっておりそれを読み上げるか暗記したものを発表するので、発表の途中で修正を加えることは稀である。

これに対して会話においては相手との共同作業で意味を作り出す。意味の流れは双方向である。テニスの如く言葉のボールが行ったり来たりする。相手が打ってきたボールによって自分のショットも変わってくる。つまり相手と言葉を交わしながら話しが展開され、相手の言葉を聴きながらお互いが意味の調整を行い会話が進んで行く。自分の意図が相手に上手く伝わっていないようであれば言葉を付け加えたり言い方を変えたりする。発話を途中で放棄したり前言を取り消したりすることもある。これを会話における話者の「情報修正」という。場合によっては、自分が上手く表現できなかったことを相手が手助けしてくれて初めて意味が通ることもある。

また会話においては相手が自分の発話を待っているので即興性が要求される。一般的には日本語でのコミュニケーションよりも英語でのコミュニケーションにおいての方がリスナーはせっかちである。英語での会話において、自分の発話にポーズが空くとすぐに相手が話し始めてしまう。何も言わずにポーズを空けるのではなく、let me see, you know, I meanなど「自分は今次に言うことを考えているのですよ」という言葉のシグナルを発すると、言いたいことがすぐに出てこない時に間を繋ぐことができる。

英語圏の人々と対等に英語で会話をするためにはモノローグとしての「英語発信力」だけでは不十分だ。会話をする時には日本語でもしているように相手に繰り返しや説明を求めたり、誤解を解いたり、理解を確認したりするという会話の流れの調整が必要だ。これができないと自然な会話の流れの中で相手と共同でお互いの意図を交換しあうことができない。つまり英語での会話において話し相手と協同でお互いの意思を尊重しながら相互理解をするためには英語特有のコミュニケーションストラテジーを身につけないといけないということだ。(英語特有のコミュニケーションストラテジーについては別な機会にもう少し詳しく述べてみたい。)

「受信型」→「発信型」→「対話型」と英語教育・学習の目標はコミュニケーションメディアの進歩に伴って進化し続けている。

今回のブログは少し硬い文章となってしまったがこれはビジネスの世界だけの話ではない。今流行の「右脳学習法」「音読」「リピーティング」などでモノローグとしての「発信型」英語力は鍛えることはできるかもしれない。しかし上記の「対話型」英語コミュニケーション力はネイティブとの実践的なコミュニケーションの場で鍛えて行くのが最も効率が良いだろう。疑う余地はもはやない。

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November 03, 2005

ビンバンブン経営者へ物申す: 英会話教育と会社経営

ご存知の方々も多いと思うが、英会話家庭教師派遣業の最大手のビンバンブンが倒産した。

2日の毎日新聞記事を引用する。

家庭教師派遣会社:破たん、受講料8億余円は返済不能に
英会話の家庭教師を派遣する「ビンバンブンクラブ」を全国展開する「オーブエデュケーションシステム」(さいたま市大宮区)と「エデュケアシステム」(東京都新宿区)が東京地裁に自己破産を申し立てたことが分かった。同社の派遣事業は28日に終了し、東京地裁が翌日、破産手続きの開始決定を出した。受講者は全国で約2万6000人に上り、返済不能な前払い受講料は2社で約8億4000万円の見込み。同社は会員らに受講料返還は不可能とする通知をしており、受講者の間で「被害者の会」を結成する動きも出ている。2社の負債総額は約48億円の見通し。両社は「脳内革命」などを出版した「サンマーク出版」を含む企業グループを運営するSMG(東京都新宿区)の系列会社。毎日新聞 11月2日

また、同日の朝日新聞の記事によると講師に対しても未払いの賃金が1億1千万円もあるそうだ。

同業の経営者として同社に対して強い憤りを感じる。
社会的な責務の一端を担う会社は当然未受講分前払い受講料を返還すべきだ。講師に対しても賃金の未払いは許しがたい行為である。破産した子会社ができないのであれば親会社のSMGがすべての責任を果たすべきだ。

受講料3年分35万円を一括払いというのも度を越している。一括で払えない人へは信販会社にローンを組ませていたようだ。

ビンバンブンに関してはここ数年ネット上で教務のいい加減さに関して苦情が絶えなかったようだ。ビンバンブンに勤務していたという講師の方から担当していた生徒さんに紹介したいと弊社のパンフレット請求で直接連絡をもらったが、講師に対しても事前に何の通達もなく、倒産の件は外部メディアで知ったという。講師に対する研修もサポートも殆どなかったようだ。

関係者によると「中途退会者が新規入会者を上回り、受講料返還経費などがかさんだ。」ということだ。教務運営がずさんであれば中途退会者が増えるのは当たり前である。

教育産業における会社組織はビジネスだが、利益一辺倒では決して成功しない。

今回の倒産劇で思い出したのはECC外語学院の創始者、故山口勇氏の次のような言葉である。私は新卒で20年以上前にECCに就職したが、山口氏の新入社員への訓示で、

「英会話スクールにおいて一番大切なことは、営業と教務のバランスだ。絶えず経営者は50%-50%のバランスを考えないといけない。これは経営者だけではなく社員も講師もこれを絶えず念頭において仕事をしないといけない。営業が教務よりも重んじられると生徒は逃げていく。しかし教務にばかり一生懸命で営業を軽んじると会社としての経営が成り立たなくなる。50-50が理想だ。1%であれ、どちらかに傾いてはスクールの発展はない。」

山口氏はゼロからECCを立ち上げ、現在もECCはビジネスでも英語教育でも成功を収めている。

私たちエース英会話スクールも襟を正してスクール運営と教務のバランスを保たねばと強く感じた。

PR: エース英会話スクールでは、長年英会話の業界に携わってきた経営幹部が、運営と教務のバランスを理想的な50-50にすべく最善を尽くし一般家庭へ英会話家庭教師を派遣しています。

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