November 27, 2005

これからの英語学習は「対話型」を目指さなければならない!

私は以前ブログでTOEICの点数をアップするという「受信型」英語学習はもう古い、これからは「発信型」英語学習だと書いたが、発信型英語学習という考えでもIPコミュニケーション社会には十分に適応できないことに気づいた。

TOEICが登場する前から学校英語は、「中学校から大学卒業まで10年間も英語を学習するにもかかわらず日本人は英語が話せるようにならない。」という決まり文句的な批判を浴びていた。そこで登場したのがTOEICである。大学受験に代表される受験英語から学習者を解放しビジネスの場面で真に使える英語力を測定するという触込みでTOEICはスタートした。しかしながらTOEICの約20年間の歴史を振り返ってみると、確かに内容的には現在はネイティブスピーカーでも使わないような表現や重箱の隅を箸でつつく様な細々とした文法ルールを問う問題は改善されたが、大学入試のための英語受験勉強とTOEICの点数を上げるだけのためのTOEIC対策学習は50100歩であるといわざるを得ない。

なぜか?

大学の受験勉強は長年読解のための英文法、長文読解というリーディング力(実は英語を如何に日本語に訳すかという翻訳能力または日本語に訳した上で内容を理解するという訳読力)に尽きる。明治の開国から第二次世界大戦終結までの、欧米の技術や最先端知識に追いつき追い越せという時代であれば、その技術なり知識を英文で書かれた書物で読解する必要性が高く、音声での情報収集は考えられない時代であったのであるから、英語学習の主たる目的が英文の読解能力の育成であったとしても、それは当然といえば当然である。

しかし時代とともに我々が必要とされる英語力は姿を変える。最近になって大学入試でリスニング力が問われるようになり、益々TOEICの大学入試との差別化が難しくなってきた。大学入試の問題も以前と比べると遥かに実用的なものになってきたが、もはやリーディングとリスニングを問うテスティングは時代遅れである。

しかしながら、「これからは自分から情報を発信しなければならない。つまりライティングとスピーキングの時代だ。」と声高に叫んだとしても、その考えはインターネットが普及する前までの考え方かも知れない。ビジネスの場面で、ビジネスレターを郵送したりテレックスで送信するという方法で情報提供したり、自社の製品や商品の優れた点をプレゼンテーションで発表するという一方向性の情報提供の時代はインターネットの普及と共に終焉した。今時、国際郵便でレターのやり取りをして商売をしている会社は存続していないはずだ。情報をレターという文字情報にして伝達する方法およびスピーチやプレゼンテーションという音声情報伝達手段で、原稿を予め用意し十分にリハーサルを踏んだ上で発表する準備された発表方法(Prepared Speech or Presentation)という形式のライティング・スピーキング、それらを象徴する一方向性の「発信型」情報伝達のための英語教育・英語学習だけでは事足りなくなってきた。

私が主宰している英会話スクールの社会人の生徒さんで英会話レベルは決して高くない人でも海外での学会や海外出張で英語でのスピーチやプレゼンテーションを行っている人は少なくない。予めスピーチやプレゼンテーションの原稿をネイティブ講師に手伝ってもらって作成、発音や声の出し方などネイティブ講師について十分に発表練習をすればそれなりのスピーチやプレゼンテーションはできる。しかし、そんな方々の共通の課題はまず発表後の質疑応答だ。スピーチやプレゼン直後のQ&Aセッションであれば予想の範囲内の質問を講師に作成してもらい答え方も予め用意して練習しておけば何とか切り抜けられるようだ。しかし彼らが本当に困るのはセッション後のパーティや食事会におけるいわゆる自由な場面での「対話」だそうだ。どんな質問が出るかはその場の雰囲気であり、どんな人と会話をするかによって話題も変わる。特にビジネスパーソンで接待する側であれば尚更である。硬い話題ばかりではないので、様々な話題に適応して英語で相手との会話を進めなければならない。

英会話力初級の人でも英語で準備したものをモノローグというかたちで「発信」することは可能であるが、何が話題として飛び出すかわからない自由な会話場面でのダイアログ、つまり「対話」には適応できないのである。「対話」においては、発信者としての自分の情報伝達が完了したとたんに、相手から質問や情報が提供され、それに即反応しなければならないからだ。情報伝達の「発信」準備時間が限りなくゼロに近づいている。

情報伝達における一方向性からの進化型は双方向性である。対面式の「対話」のみならず文字情報でのコミュニケーションにおいても「発信」準備時間が短くなってきた。電子メールにより外国とのやり取りでさえ相手がオンラインであれば瞬時に自分のメッセージが相手に届く、急いでいる場合には送信して5分も経たないうちに相手から返信が届いてそれに対してまた応答するという双方向での「対話」に近いかたちの文字情報コミュニケーションが可能になったのである。

また「高価な国際電話」という表現はすでに死語となった。最近の若い人はKDDが国際電信電話の略で、国際電話をかけるときには国際電話交換士を経由して3分数千円という高価な国際電話料金をKDDに支払わなければ海外の人と電話で話せなかったことを知らないだろう。IP電話・スカイプ・メッセンジャーなどインターネット網を使った双方向音声伝達ツールの普及により国際的な音声コミュニケーションの敷居は格段に低くなった。

もう、一方通行の情報発信のための「発信型」英語教育・学習の時代はすでに終わったのだ。これからはIP通信という時間的なロスのない双方向でのコミュニケーションの時代である。「発信型」ではなく「対話型」である。「発信型」が目指しているものはいかに自分の情報を「正確にわかりやすく、適切に」相手に提供し、それを受けた相手がその情報を読んだり聞いたりして理解、説得されるということが問題とされる。しかしながらこのような情報提供は一方向のモノローグである。これからは「対話」つまり即興性が要求される。自分が情報発信したらすぐに相手から返事が来る。すぐに返信してきた相手は、それに対するできるだけ早いリスポンスをこちら側にも求めるものである。国際的なコミュニケーションにおいて「即興性」が益々その重要度を高める。

前述のとおり「対話」とは対面での会話に代表される口頭でのコミュニケーション能力である。モノローグに対するダイアログである。「発信型」ではいかに効果的に自分の思いを表現して相手に伝えるか、その必要十分条件として「正確さ」と「適切さ」を追求してきた。「発信」と「対話」との相違はモノローグとダイアログとの違いである。

スピーチと会話との対比でもう少しわかり易く説明しよう。

スピーチでは聴衆に伝えたい自分の思いをまず文章にして、それから言葉として発する。自分が意図する意味が誤解されないように「正確に」「適切に」表現するように内容を吟味し十分な発表練習をしてからスピーチに臨む。意味の流れは直線的である。発表者(speaker)から聴衆(audience)へメッセージが言葉として伝達され聴衆がスピーチの意味を理解する。多くの場合、スピーチの原稿は予め作られ、言うべき英文は出来上がっておりそれを読み上げるか暗記したものを発表するので、発表の途中で修正を加えることは稀である。

これに対して会話においては相手との共同作業で意味を作り出す。意味の流れは双方向である。テニスの如く言葉のボールが行ったり来たりする。相手が打ってきたボールによって自分のショットも変わってくる。つまり相手と言葉を交わしながら話しが展開され、相手の言葉を聴きながらお互いが意味の調整を行い会話が進んで行く。自分の意図が相手に上手く伝わっていないようであれば言葉を付け加えたり言い方を変えたりする。発話を途中で放棄したり前言を取り消したりすることもある。これを会話における話者の「情報修正」という。場合によっては、自分が上手く表現できなかったことを相手が手助けしてくれて初めて意味が通ることもある。

また会話においては相手が自分の発話を待っているので即興性が要求される。一般的には日本語でのコミュニケーションよりも英語でのコミュニケーションにおいての方がリスナーはせっかちである。英語での会話において、自分の発話にポーズが空くとすぐに相手が話し始めてしまう。何も言わずにポーズを空けるのではなく、let me see, you know, I meanなど「自分は今次に言うことを考えているのですよ」という言葉のシグナルを発すると、言いたいことがすぐに出てこない時に間を繋ぐことができる。

英語圏の人々と対等に英語で会話をするためにはモノローグとしての「英語発信力」だけでは不十分だ。会話をする時には日本語でもしているように相手に繰り返しや説明を求めたり、誤解を解いたり、理解を確認したりするという会話の流れの調整が必要だ。これができないと自然な会話の流れの中で相手と共同でお互いの意図を交換しあうことができない。つまり英語での会話において話し相手と協同でお互いの意思を尊重しながら相互理解をするためには英語特有のコミュニケーションストラテジーを身につけないといけないということだ。(英語特有のコミュニケーションストラテジーについては別な機会にもう少し詳しく述べてみたい。)

「受信型」→「発信型」→「対話型」と英語教育・学習の目標はコミュニケーションメディアの進歩に伴って進化し続けている。

今回のブログは少し硬い文章となってしまったがこれはビジネスの世界だけの話ではない。今流行の「右脳学習法」「音読」「リピーティング」などでモノローグとしての「発信型」英語力は鍛えることはできるかもしれない。しかし上記の「対話型」英語コミュニケーション力はネイティブとの実践的なコミュニケーションの場で鍛えて行くのが最も効率が良いだろう。疑う余地はもはやない。

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September 18, 2005

TOEICはもう古い?GTECの時代がもうすぐそこまで来ている!

ベネッセとベルリッツが共同開発したGTECはきっと5年後10年後にはTOEICを凌駕しているであろう。

   GTECホームページ http://www.benesse.co.jp/gtec/index.html

従来TOEICが行ってきた、「リーディング力」と「リスニング力」という英語受信能力を測定し、「ライティング力」と「スピーキング力」という英語発信能力を予測するというテスティングの手法は完全にその岐路に立たされた。

なぜならば、社員の英語での即戦力を測定するために行ってきたTOEICスコアの結果と社員の「ライティング力」と「スピーキング力」に大きな乖離があることに気づき始めたからだ。もう何年も前から気づいていたと言った方が正しいだろう。しかし企業がなぜTOEICを使い続けたのかというと、答えは単純、TOEICに変わりうる英語テストがこの世に存在しなかったからだ。この20年間、世界的な受験者の伸びに大あぐらをかき、TOEICはまったく進化してこなかった。20年前のテスト内容と現在のテスト内容にほとんど変化はない。

GTECのテストでは、実際のビジネスで通用する4技能(読む・聞く・書く・話す)を測定するそうだ。特にTOEICが予測はするが正確に測定できない「書く・話す」という英語発信能力を、受験者に実際に英文を書かせ、そして実際に英語を話させ、それをレーターと呼ばれる評価官が一人ひとりの英文を「読み」「聞いて」評価するという。

TOEICは試験会場または社内・学校などの会議室で一斉受験、マークシートに解答してコンピュータで処理している。これに対してGTECは一人ひとりがパソコンに向かいテストを受け、その結果がリアルタイムでGTEC本部のホストコンピュータに送信される仕組みだ。だからこそライティングセクションで受験者が実際に手元のパソコンで打ち込んだ英文が記録として送信され、またスピーキングセクションで受験者が実際に発話した英語音声が送信され、GTECのホストコンピュータに文書データおよび音声データとして保存される。そのデータをGTEC本部のレーターが一つひとつ評価するという仕組みだ。これはアメリカのETSTOEFLで導入したcomputer based testの手法であり、TOEICも開発・制作したETSGTECに先を越されたということである。

GTECは既に日本の一流企業(三井物産、日本オラクル、アドバンテストなど)に導入され始めており、私の予想では近い将来一般の会社にもかなり普及し、中小企業でも導入されるようになる。そうなれば企業への就職英語力判定としてGTECスコアが使われるようになった段階で大学生まで受験者層が降りてくると思われる。TOEICGTECに受験者を奪われるのを指をくわえて傍観するはずもなく、早い段階でGTECに対抗しうる英語発信能力測定のためのセクションがTOEICに追加されるはずである。

そうなれば今後益々国際的なビジネスシーンで重要視される英語発信能力を如何に正確に測定できるかがテストの良し悪しを決める決定的な判断基準となるはずである。ビジネス版での英語発信能力とは、具体的には電子メールでのやり取りで商談を交わすライティング能力、IP電話やMSメッセンジャー、スカイプなど(インターネットで接続可能な電話に近いPC音声コミュニケーションツール)を使って外国にいる相手と直接口頭英語で交渉するというスピーキング能力のことである。

このように企業が信頼する英語コミュニケーション能力評価テストが英語を「読む」「聞く」という受信能力測定から、英語を「書く」「話す」という発信能力測定に移行することは日本の英語教育にとっても非常に喜ばしいことである。

英語を「読む」「聞く」という受動的な能力のみ測定するTOEICで高得点を取れば実際のビジネスにおいて外国人の言っていることや書いていることは理解できるという証明にはなったが、残念ながら自分の考えや意見などを英語で相手に十分伝えられるという発信英語力の証明にはならなかった。TOEICで高得点を取ることに躍起になってきた大学生や会社員たちにとってはいい迷惑である。

なぜならばTOEICで高得点を取るという目的(如何に速く正確に英文を「読みこなし」、如何に正確に英語音声を「聞き取る」という受動英語能力向上のために英語学習時間を割いてきたからだ。あまりTOEICの得点に影響を与えない英語発信能力の学習に時間が割けなかったからである。つまりTOEIC受験が会社から義務付けられていたので、本当の意味で実際のビジネス場面で必要とされている英語力を伸ばすことができなかったのである。この意味において、いままでTOEIC20年という長期に渡って大あぐらをかいてきたことが、日本の英語学習者に対して少なからず悪影響を与えてきたことは誰も否めないと思う。

しかし過ぎ去ったことで悲観的になるのはもうやめよう。

英語受信能力から英語発信能力の育成へと、日本の英語教育のパラダイムが大きくシフトしようとしている。

明るい未来が私たち英語学習者を待っている。

PRエース英会話は創設以来、英語発信能力の育成に邁進している。

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