英語圏の社会的な話し方のルール
日本人が英語をもっと上手に話せるようになるためには、次の3点を実践する必要があると前の記事に書きました。
1)「日本語的な発想で考えた日本語を英語に置き換える」ということをやめる。
2)「英語的な発想で考えて、英語の語順で表現する」という訓練をする。
3)「英語での話し方の社会的なルール」に則って実践会話練習をする。
だいぶ間が空いてしまいましたが今回の記事ではこの3番目のポイント、「英語圏の社会的な話し方のルール」について書きます。
英語圏の社会的な話し方のルールを知っていると、よりスムーズな英語でのコミュニケーションが可能になります。
例えばアメリカ人の知り合いに、
Your English is very good.
と自分の英語を褒められたら、あなたは何と答えますか?
思わず謙遜して、
No, no, my English is not good yet.
と答えませんか?
日本語では普通の返答ですが英語では謙遜せずに素直に褒めてくれたことに対して、Thank you. とお礼を言うのが一般的な返答の仕方です。日本人は相手に褒められてそれをそのまま受け入れるというよりも、謙遜することを美徳と考えています。
同窓会などにとびっきりおしゃれして出かけて、「素敵なスーツね。お似合いだわ。」などと褒められても、「ありがとう」とは応じずに、「あらそうかしら、これ古いんですよ」などと必ずと言っていいほど謙遜します。
これを外国人との英語での会話でそのまま言ったらどうでしょう?
A: You look really nice in your suit!
B: Oh, really? This is actually very old.
A: ???
せっかく相手の良いところを褒めたのに、賛辞を素直に受け入れないなんて変な人だなと誤解されてしまうかも知れません。またそう返答された外国人は何と言ったらよいか閉口してしまうかも知れません。
「謙遜の美徳」という文化的な価値観は日本人特有のもので、英語圏の「社会的な話し方のルール」にはそぐわないものだと思います。
別な例を挙げます。
お客様を「夕食などに」招待してお迎えする時、米国では
「さあ、お入りください。ワインもスコッチもビールもありますし、お料理もたくさん用意しておりますのよ。どうぞくつろいで、ご自由にお取り下さいね。」
などとたくさん飲物や料理を用意していることを強調します。
これに対して日本人は謙遜して、
「何もございませんが、どうぞ」などと言う事が普通でしょう。
外国人をお客様で迎えるときにそのまま英語で、
We have nothing to serve you at home.
But please come in.
と言ったら、お客様はちょっと気分を害してしまうかも知れません。
このように「褒める」「歓迎する」「謝る」「断る」「依頼する」など様々な言語行動(発話行為)についてそれぞれの文化で独自の「社会的な話し方のルール」があります。
使用言語の文化において文化的に異なる言語行動をしてしまうと「相手に誤解」されたり、それがその文化で良くないものであれば、「相手に不快」な思いをさせてしまったりする危険があります。ですから、外国人とその人の言語で話をする時に、相手の文化に対して
基本的なことは必ず押さえ、その文化での社会的な話し方のルールに則って発言すべきでしょう。
私たち日本人が英語で英語圏の人たちと会話する場合、英語圏での社会的な話し方のルールに従って英語で会話すべきだということです。逆の立場で、日本人と外国人の人たちが日本語で会話をする場合には、日本文化の持つ社会的な話し方のルールに従って日本語で会話すべきでしょう。
皆さんよくご存知のように、言語と文化(その言語を話す人々の生活習慣や考え方など)が密接に関連しているからです。英語圏の社会的な話し方のルールに則って発話すれば、自然に英語的な発想で英語が話せるはずです。つまり英語圏の文化が持つ社会的な話し方のルールを確りと学んでから会話をすると、よりスムーズな英語でのコミュニケーションが可能になるということです。
別の見方をすると、英語圏の文化が持つ社会的な話し方のルールに則って英語を発話することを心がければ、自然に英語的な発想で英語を話すことになるのです。
ここで問題です。
英語圏の先生に何か贈り物を手渡すときに、日本語では「つまらないものですが」と言葉を添えるのが一般的ですが、英語では何と言ったら良いでしょうか?
皆さんは、日本語を英語にそのまま置換えて、This is a trivial thing. などとはもう言わないはずです。
ヒントは、
「つまらないものですが」に隠されている言外の真意を考えて下さい。
日本語は「察し」の言語だとも言われています。最後まで言わなくても相手に自分の真意を察して欲しいのです。「つまらないものですが、お気に召せば幸いです。」というニュアンスが言外に含まれているのです。
英語でのコミュニケーションで言葉を最後まで言わずに相手に自分の真意を察してもらうことを期待することはできません。逆に自分の真意をストレートに言わないと相手には伝わりません。
ですから英語では、I hope you'll like it. と言葉を添えるのが適切です。
PR: エース英会話スクールでは、英語圏の社会的な話し方のルールを各講師が意識しながらレッスンを実践しています。
※この記事を最後まで読んでよかったと少しでも思われた方は、
「人気英語学習ブログ」に投票をお願いします。 投票する
The comments to this entry are closed.
Comments
こんにちは。You look really nice in your suits!という言い方はよろしくないということで取りあげられてらっしゃいますが(ちなみにsuitは単数で使いますよね?)、もう一つ文化的な角度から言うと、私自身は、昔、イギリス人の家庭教師から、Youを主語にせず、Your suit looks nice on you!またはNice suit!というふうに、着ているものを主語にせよと教わりました。Youを主語にするのはきつすぎて、失礼に当たるという考えかたなのでしょう。ただ、それ以前の問題として、人の着ているものや持っているものにいちいちコメントするのは「はしたない」とも教わりました。しかし、アメリカ人などは、この点、階級の上下を問わず無頓着という印象を持っています。
Posted by: 日向清人 | December 19, 2005 08:29 AM
日向様 コメントありがとうございます。ご指摘のとおりスーツは英語では単数扱いでsuitでした。読者の方が間違いて覚えては大変ですので早速訂正させていただきました。同じ英語圏でもアメリカとイギリスで話し方のルールにはかなり違いがあるようです。同窓会で久しぶりにあった人への褒め言葉なのでここではあえて、You look ... としました。アメリカではパーティの場へつくやいなや、人が着ているものや、ヘアスタイルなどから、褒める種をすばやく見つけて、話しかけるきっかけにするようです。I like your tie. That's a beautiful tie.などと一番褒められそうなものを見つけて話し始めます。
Posted by: Ichimura | December 19, 2005 01:13 PM
はじめまして!
大変興味深い内容を前にコメントせずにはいられなくなりました。
英語を話すには英語的発想をする、という英語教育に対する考え方に共感いたしました。
また寄らせていただきます。
ちなみに私もUBC出身です。BAですが。
Posted by: フナ系 | December 29, 2005 08:17 PM
フナ系さん コメントありがとうございました。日本人の方かと思い、ブログに立ち寄らせていただきましたがカナダ出身なんですね!私のスクール(エース外語)にもUBCを卒業したカナダ人講師が多数おります。皆さん教育熱心でフレンドリーな先生ばかりです。最近は早稲田大学や慶應大学など日本の大学とUBCとの交換留学で来日される方が多いようです。
Posted by: Ichimura | January 01, 2006 08:16 PM