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August 11, 2005

英会話マスターにとって右脳学習と左脳学習(認知学習)はどちらが有効か?

新宿紀ノ国屋に行って一番売れている英会話学習本が右脳学習なのに驚いた。前の記事に右脳学習はオーディオリンガルに基づいていると書いたがその本を手にとってみて増々確信した。

その本は約50ある英文エッセーを暗記暗誦するというものだ。暗誦と呼ぶかわりに「つぶやき」という表現を使っていたが、同じことだ。毎日10分間CDを聞いて真似しながら(模倣)丸暗記するという単純な学習方法である。おそらく英文法を確りと理解し英文エッセーの意味を確りと理解している人は丸暗記して暗誦(最初から最後までつぶやくこと)は出来るかもしれない。しかし丸暗記に費やされる労力は並大抵なものではない。その労力にむくわれるだけ会話力が身につくとは到底思えない単純な教材である。

前の記事で右脳学習はオーディオリンガルのパターンプラクティスに似ていると書いたが、オーディオリンガルのもう一本の柱は英文を模倣し暗記暗誦することにある。模倣するとは聞いた英文を素早くオーム返しに聞いたまま再生することで意味を考えながら再生することではない。(最近はリピーティングと呼ばれる場合が多い。)まさに刺激と反応の世界である。犬が肉を見てよだれを流すとの全く同じである。これはその本の筆者の狙いとする赤ん坊や幼児が親の言うことを意味はおかまいなしに真似することである。意味を考える左脳を介在させずに音声:言語の表層構造を真似して言ってみることに過ぎないので、すらすらと暗誦できたとしても自分の言いたいことを表現できるようになるとは到底思えない。

その筆者は、「語学学習では赤ん坊のように真似して言ってみる事が一番大切だ」と書いているが、大人と赤ん坊はまったく別な学習パターンを持っており、所詮、学生(厳密には体験学習から概念学習・認知学習に移行する小学校高学年から大学生まで)や大人が、赤ん坊に戻ってその学習過程を踏襲することは不可能であるし、その真似事をしたとしても効果は高が知れている。学生や大人にはその年齢に応じたもっと効果的な学習方法があり、それを実践すべきだ。

その本の右脳学習はまさに20年以上前に英会話スクールで盛んに実践されていた暗記暗誦指導だ。私も1年間を費やして生徒にテキストを最初のページから最後のページまで暗記暗誦させていた。生徒にとっては大変な労力であった。もちろん英会話学校であるから暗記暗誦した英文を実際の会話で使えるようにドリルでパターンプラクティスを十分に行い、実践会話で使う時間ももちろんあった。暗記暗誦の後のこのようなきめ細かなフォローがあったので効果はある程度あった。しかし同じような効果は暗記暗誦をしなくても達成出来たというのが私の実感であった。

5年間ほど自分のレッスンや新人講師の研修で暗記暗誦を徹底的にやって直接的・間接的に1千人近くの生徒へ教えて私の得た結論は、「同じ1日1時間、年間何百時間を英語学習に費やすのであればもっと効率の良い学習方法に切り替えた方が遥かに賢い選択である。」ということだ。

別な観点から考えてみたい。

私は日本の大学在学中にESSという英語部に入って英語によるコミュニケーションを学んだ。ドラマ、スピーチ、ディスカッション、ディベートセクションという4つのセクションに別れて活動を行っていた。ドラマは英語で書かれた台本を暗記して演じる(暗誦)する活動=言うなれば暗記暗誦学習=右脳学習であった。ディベートはある話題について自分でスピーチを書き発表、相手の反論に対して即興英語で太刀打ちする、言うなれば実践会話の場がたくさんあったので自分の話すメッセージ内容を考えてそれを表現する=まさに左脳学習だった。どちらのほうが真の会話力が身につくかは答を言うまでもない。

暗記暗誦も良いがその労力に見合った成果は期待出来ない。闇雲に英文を模倣し暗誦するというような非効率な学習方法はお勧め出来ない。学習者はもっと利口になるべきだ。英語を実際のコミュニケーションで使うことを考えてほしい。だれでも外国人と自由に自分の思っていることを話せるようになりたいと思っているはずだ。相手に伝えたいメッセージはイメージとして右脳で生まれ、それを左脳で言葉にしなければ話せない。イメージだけから言葉は生まれない。左脳での意味の処理が不可欠である。意味を十分に意識しながら英語の言葉のルール(英文法や語法)を確りと認識して自分で表現したい英文を創れる自力を養うことが大切である。

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Comments

こんにちは。自分のブログで右脳神話をとりあげるに当たり、こちらにトラックバックさせていただきました。鋭い、いい記事だと感じましたが、暗記の点だけはちょっと立場が違い、必要最小限の決まり文句といった、自分で作ってはまずいものはやはり暗記に徹した方が効率的だと考えています。

Posted by: 日向清人 | December 01, 2005 at 08:50 AM

日向様 コメントありがとうございました。
私も暗記を100%否定する立場ではありません。特に会話でよく使われる機能表現(定型表現)については、例文と共にある程度暗記しておいた方が自分の思いを英語で表現する時に楽に英文を発することができると考えています。これはアプローチ的にはNotional Functional Approachで右脳学習とはまったく異なります。機能表現を自分の発話の中でどう応用していけばよいかについては別な記事に詳しく書こうと思っています。

Posted by: Ichimura | December 01, 2005 at 05:22 PM

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Tracked on December 01, 2005 at 06:49 AM

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